当日の準備

・「今日の資料はないのですか?」

当日の準備で重要なのは、説明用の資料です。といっても、参加者に渡すものではありません。私の場合は、基本的に参加者に資料を配付することはしません。普通の会議などでもよくあることですが、「お手元の資料の○ページの図○○をごらんください」といっても別のページを見ている人が必ずいませんか。ついつい自分の最も関心のあることがどこに書いてあるのかに意識がいってしまい説明が耳に入らないこともあります。ですからワークショップでは、必要な資料は全て大きな模造紙に書いて参加者の見やすい位置にはりだしておきます。ワークショップの目的と成果の活かし方や、当日の内容と進行スケジュールなどももちろんそうします。模造紙を大きなアクションで指し示しながら説明をすることによって、参加者の意識をひとつに集中させることができます。また、全体の流れを無視した発言などがあった場合にも、「その話題は、この先の○番目に話し合います」と進行スケジュールを指し示すことによって本来の流れに戻すことができます。

・小道具の心遣い

ワークショップで使う小道具はプログラムによっていろいろでしょうが、ここでは「あると便利なもの」をいくつかご紹介しておきます。「名札」は必須です。これは参加者同士の交流に役立ちますが、ファシリテータにも重要なものです。発言希望者を指し示す場合など「はい、どうぞ」ではなく「はい、○○さんお願いします」というように、個人の名前を言うことによって、ワークショップが単に大勢の集まりではなく、それぞれに人格をもった人々が互いの意見を尊重しながら共通の理解と、創造的な発見をする「場」であることを印象づけるうえで意味を持ちます。次に便利だと思っているのが、段ボールの板です。およそ畳一枚分ぐらいの大きさの段ボールは、梱包資材屋さんなどであつかっています。この段ボールに資料の模造紙をはったり、グループ作業の成果の発表に使ったりします。会場によっては、模造紙などを張り出すことのできる壁面が少ない場合もありますし、議論の進展にあわせ、最も必要な資料を参加者の見やすい位置にすばやく移動することができます。それに、会場への道具の運搬の際にも軽いことは意味があります。次は「顔料マーカー」です。油性のマーカーですと模造紙などに書く際に、裏うつりしてしまいますが、顔料マーカーはそのようなことがありません。最初のうちは模造紙を2枚重ね貼りをしていましたが、今から思うと紙資源の無駄遣いだったなと反省します。あと、便利な小道具としては「白色布テープ」があります。いろいろなものをはりだすのにテープが必要になるのですが、後で剥がす際に会場の壁面を汚したり、塗料などを傷めてしまう場合があります。その点、布テープは比較的安全です。「白色」としたのは模造紙をはりだす際の美観の問題です。せっかくきれいに作った資料も、茶色のテープでベタベタはると見苦しくなってしまいます。そのほか小道具はまだまだあるでしょうがこれくらいにしておきます。

・暖かい気持ちと温かい飲み物

あと用意しておくものとしては、「暖かい気持ち」と「温かい飲み物」です。開催前は主催者側は緊張の極に達しています。なかには「どうしてワークショップなどすることになったのだろう。どんな意見の人が来るやもしれないのに」と後悔する気持ちが芽生える人もいます。私などしょっちゅうですが・・・。でも、もう一度ワークショップの性善説を思い起こし、良いまちづくりをすすめる第1歩を一緒に歩む方々を、お迎えするのだという気持ちになりましょう。この気持ちの持ち方一つで、本人はもとより、参加者にもその気持ちがどこかで伝わり良い結果をもたらすと思います。懐疑的な気持ちを引きずってのぞむと、参加者にも懐疑的な気持ちが乗り移ります。それから「温かい飲み物」は、長時間のワークショップの中休みに参加者の緊張感を解きほぐし和やかな雰囲気を回復させるのに役立ちます。もちろん夏場は「冷たい飲み物」にしてください。