プログラムを考える

・目標、成果の再確認

プログラムを考える時に、まず目標、成果について再確認しておきましょう。最近はいろいろなワークショップの手法が紹介されていますので、これをやってみよう、あれをやってみようと目移りしてしまいます。また逆に、何回かワークショップを経験すると「今回もあの方法を使ってみよう」というように手法の使い回しや、マンネリ化に陥ることがあります。重要なのは、設定した目標、成果にふさわしい流れや手法を選択するということです。うまくいった手法の使い回しは、効率化という点では意味もありますが、時間が許すのであれば常に目標や成果に適した手法を新しく開発するといった姿勢を忘れないようにしましょう。そうしないと、運営する側の緊張感も徐々に薄れ、参加者との真剣勝負で負けることもあります。

・全体のプログラムの流れを考える

ワークショップを体験してもらうといったケースを別にすると、1回だけで終わることはほとんどないと思います。どの様に議論を積み重ね目標や成果に到達するかについてじっくり考える必要があります。漠然と3回ぐらいでなんとかなるだろうと回数を設定して参加者の公募の案内を出してしまったあと、もう一度、綿密にプログラムを設定したら、どうもその回数ではおさまらないということがわかり、おおいに反省したこともありました。もちろん、参加者の自主的な提案で「こんな取り組みもしてみよう」ということになりワークショップの回数が増えたりすることはありますし、内容もワークショップの様子を見ながら必要であれば参加者と相談して若干変更することはあると思います。私は、その点実際に始まってからの「場」の状況によって柔軟に対応することにしていますが、やはり最初の段階でかなり綿密なプログラムを考えることは非常に重要です。全体の大きな流れをおさえるのはもちろんですが、できるだけ各回ごとのワークショップの内容も想定して、その回で充分な成果があげられるか検討してみる必要があります。

・ワークショップの3段階

各回ごとのワークショップの内容はいろいろですが、基本的構成はありそうです。J.L.クレイトンは典型的なワークショップの構造として、@オリエンテーション、Aグループ活動、B全体討議の3段階を挙げています。オリエンテーションでは、主催者がワークショップの目的と構造を説明し、次のグループ活動を行ううえで必要な情報を参加者に簡潔に提供する。グループ活動では、目標を達成するための課題を遂行したり、シミュレーション・ゲームへ参加するなどの組織的な活動を行う。全体討議では、各グループの成果を全体で討議・評価し、最重要項目に優先順位を与える、といった流れです。グループに分かれて作業や基礎的議論をおこなうのは、参加者が均等に発言や役割分担をおこなえるには6人前後といった数が目安になるからです。したがって、参加人数が少ない場合は別のプログラム構成も考えられます。

・その日の目に見える成果を何にするか

ワークショップの内容を検討する際に重要なのは、最終的にその日の目に見える成果を何にするかということをイメージする事です。まちづくりの課題などを記入した地図をつくるのか、何か優先順位を確認するために投票結果をグラフ化したものをつくるのか、まちづくり物語のシナリオと絵コンテをつくるのか。あるいは体の不自由な方の大変さを疑似体験する道具を使ってまちを歩く「体験の共有」をするのかなど具体的にイメージしてみましょう。これは参加者が当日のワークショップで「みんなの力でこんな成果がつくれた」という満足感を感じることができる具体的な対象を明確にするということです。そして、重要なのはその成果が視覚的に美しくなければならないということです。グループ作業の結果を全体で確認する際にも、見づらくきたないモノがならぶと、参加者の満足感が高まりません。

・作業は単純に、成果は思わぬ発見があるものに

協働作業で何かをつくるプログラムを考える際に、私はできるだけ作業は単純にし、そのかわり成果は思わぬ発見があるようにと工夫します。作業自体じっくり考えないとできないものは、参加者に良い考えが浮かばないと、その人自身不快な思いに捕らわれます。むしろ、直観で作業できるものの方が良い結果を生むような気がします。そもそも、グループ作業はメンバーの誰かに正解を求めるものではありません。メンバー全員の多様な視点を寄せ集めることによって共有するものを確認したり、何か今まで気づかなかった本質が見えてくることを期待するのです。あまりじっくり考えすぎると自分が最も良いことを言っているような錯覚をもち、後々まで自分の主張を繰り返し、他人の意見に耳をかさなくなってしまう危険性があります。右脳より左脳を使う作業を皆で取り組むことによって、結果的に全体で考える素材ができるというプログラムが望ましいといえます。ワークショップの手法でゲーム性が強いものが多い理由のひとつも、そのような点にあるのではないでしょうか。写真やキーワードなど考える手助けになる情報を提供し、そのなかから自分の感覚に合ったものを選択するという作業などは、基本的な方法のひとつでしょう。

・無理のない時間配分

プログラムを考える際の、重要なポイントに時間配分があります。通常のワークショップでは、全体の所用時間は2〜3時間程度が多いのではないかと思います。その時間のなかで何ができるのかを冷静に考える必要があります。あれもやりたい、これもやる必要があるとプログラムのなかに詰め込みすぎると、それぞれが中途半端で時間切れになり参加者のストレスとなります。常に、想定した時間より遅れ気味になることを頭に入れ、時間調整のきく無理のない時間配分を考えましょう。そのためには、想定した時間のなかで作業ができるのか試しにやってみる事も必要かもしれません。特に、何か新しいプログラムに挑戦する際などは、用意した素材と作業手順で想定した成果があげられるのかも含め、ぜひシミュレーションをしてみましょう。回数の限られたワークショップでは、その回で充分な成果が上がらなかったからといって次に持ち越すのは難しい場合が多いですし、中途で終わるのでは参加者が運営側へ不満をもってしまいます。