ワークショップの結果は地域の合意?

・ワークショップに参加している人は一部のまちづくりの意欲のある人

ここで基本的な問題ですが、ワークショップの結果は地域の合意といえるのでしょうか。ワークショップに参加している人は一部のまちづくりの意欲のある人で、意志決定を地域から信託されているものではありません。本来的には、地域における意志決定プロセスが住民参加あるいは住民主体のまちづくりという新しい潮流のもとに、もっと明確にされる必要があると思われます。例えば、ワークショップ1(課題の共有化)−>ワークショップ2(目標の共有化)−>行政の意志決定(計画案の作成)−>説明会・公聴会(計画案の公開)−>審議会・議会(計画の承認)といった意志決定の流れや、その中で住民が直接意見を言える場がどこにあり、司法を含む異議申し立ての機会がどこにあるかなどが明確にされる必要があるでしょう。今の状況は、過渡期でそれぞれのワークショップが意志決定プロセスのどこに位置づけられるものか不明確であることが多いかもしれません。私がお手伝いをしているある自治体では、行政計画の立案の前段階として「住民と行政が共有する地域の目標像(努力目標)=まちづくりガイドライン」の作成を位置づけ、作成の手法として「まちづくりワークショップ」を積極的に活用しています。その場合でも、ワークショップ=地域の合意とはとらえていません。

・重要な地域へのなげかけ

重要なのは、ワークショップの検討プロセスや結果を、どのように地域になげかけるかです。先に触れた「まちづくりガイドライン」の作成に取り組んでいる自治体では、「まちづくり通信」を発行して、できるだけ関連する地域の全戸に配布するようにしています。ある地域では、町内会の協力を得て約9,500世帯全戸に、ワークショップの開催毎に詳しい内容紹介の通信を配布しています。さらに通信には、料金受取人払いのハガキをつけ、意見をもらえる仕組みにしています。ハガキによるリアクションは6回分で約○○通と、期待以上の枚数が寄せられました。

・オープンワークショップ

ワークショップの成果をもっと地域の目に直接触れる機会をつくる事も必要でしょう。地域のお祭りの場を活用するのも有効です。先日も商店街のお祭りで、空店舗を借りてそれまでのワークショップの成果をパネルで展示して、見に来られた方にはアンケートでリアクションを御願いしました。その時、商店街のメンバーの提案で、アンケートに答えてくれた人には抽選でプレゼントを出そうということになり、何か不純な気もしたのですがやってみることにしました。これが結構ヒットで、700人以上がアンケートの答えてくれたのですが、それも熱心に自由記入欄に書き込みをしてもらうことができました。抽選に惹かれてという動機は、参加へのきっかけを与える効果であり、抽選自体が目的化しなかったのは意外でした。以前、まちづくりイベントを成功させる3原則として「現場主義」「参加しやすい方法論」「地域での自己表現」というのを考えたことがありますが、商店街のまちづくりを考えるものとして、空店舗の活用という現場主義と、抽選付きアンケートという参加しやすい方法論という点ではツボにはまっていたといえるのでしょう。

このように、限られた人数の参加によるワークショップを核にしながら、「まちづくり通信」や「オープンワークショップ」などのメディアをつうじて地域全体とのやりとりを行うことによって、地域合意へ向けたステップが一歩一歩刻まれるといえましょう。