目的と成果の生かし方を明確に

・行政と住民の100年戦争

何度もふれましたが、ワークショップの冒頭では参加者に「目的と成果の生かし方」を明確に伝えなければいけません。行政と住民の間には長い時間のなかでできてしまった意識の壁があります。住民には「行政のねらいはなんなのだろうか、いろいろ意見を聞くといってほんとうはどう住民を誘導しようとしているのか」といった疑心暗鬼の気持ちが少なからずあると考えて良いでしょう。これは、いろいろなワークショップで常に経験することですが、最初のうち「ところで、行政の本音は」と何度も聞かれます。回を重ねるごとに、徐々に信頼関係が生まれ、そのようなことを聞かれなくなりますが、初回にはかなり丁寧に今回のワークショップの目的と成果について、考えていることを伝えなければなりません。

・行政の立場では答えにくいことも誠意をもって伝える

それこそ、目的によって違いますが、なかには成果の生かし方について明確に答えられないこともあります。事前に一定程度の行政の内部調整をおこなっておく必要がある事はすでに触れましたが、住民の意見を全て柔軟に受けとめる体制ができない場合が、往々にしてあります。その際、行政の担当者として「皆さんの意見を参考にさせていただく」とするのか「皆さんの意見を行政としてきちんと受けとめ、できる限り計画に反映する努力をいたします。財政状況や、関係機関との協議においてどうしても不可能と判断される場合は、きちんと理由をご説明していきます」とするのかでは、参加者の受けとめ方が大きく異なると思われます。後者の場合でも、行政はほんとうにどこまで努力する気があるのか疑いの目で見られることは覚悟しなければなりません。それでも、先々困難はあっても最大限の努力をするという熱意を誠意をもって伝えましょう。そのためには、行政として何が可能で、何が不可能なのか、そして何がグレーなのかを明確にしておき、グレーなものはどうすればより可能性が高まるのかについて、常に検証する姿勢をもっていなければなりません。ワークショップが終わったあと、行政の「ふるい」に掛けて報告するというのでは、信頼関係が育ったり良い議論ができるということはあまり期待できません。